導入事例 5軸複合加工機での段取り工数を大幅に削減(長野県)

1. 概要

導入先業種 大手精密機器メーカ
工作機械 森精機製5軸複合加工機
加工品目 精密機器部品
加工時間 約120分
工具本数 平均20本

〜多品種生産〜

複雑形状の精密機器部品を加工するこの設備では、数十種類の部品の生産量を受注に応じて柔軟に変化させる多品種生産を行なっており、加工機1台あたり月2〜3回の段取り換えが発生する。この段取り換え作業では試し加工、寸法測定、補正投入、再び試し加工という補正工程を経て1個目の良品が完成し、連続稼働を開始するまでに約20時間の工数を必要としている。

2. 課題

〜複雑形状部品の生産性向上〜

加工部品の形状が複雑でかつ要求される寸法精度が高いため、補正工程には高度な技術者と多くの工数が必要になる。1つの部品を加工するためには平均20種類以上の工具が使用され、旋削加工とミーリング加工を組み合わせて加工姿勢は5〜8位置に変化する。

このような複合加工における寸法調整では、部品の寸法誤差を測定したうえでその部位がどの姿勢でどの工具によって加工されたものかを把握し、さらにその工具が他の姿勢でも使用されていることも考慮する必要がある。多くの工具補正や加工原点補正が互いに影響し合っていて、これらの補正量を調整する作業が非常に煩雑で難しいことは経験者であればすぐに想像がつく。

3. 空間位置精度

〜多くの要因が積み重なって大きな誤差に〜

直進軸と旋回軸の誤差を総合的に評価する独自の精度計測プログラムを使用し、基準ボールとタッチプローブで計測した加工機の空間位置精度は0.064mmであった。これは長期間連続稼働した加工機としての一例といえる。

この誤差の要因として推測できるのはXYZ軸の真直度誤差、直角度誤差、各軸のピッチ誤差、A軸中心とB軸中心とのずれ、AB軸の傾き、AB軸旋回中心とXYZ軸原点とのずれなどであるが、実際にはこれらの要因が積み重なっていてそれを各々の誤差要因に分解するのは困難である。

詳細な調査によって誤差を各々の要因に分解することができたとしても、それらの誤差要因をひとつひとつ小さくするためにはスペーサの現合調整などの機械的な調整方法では膨大な時間がかかる。また仮に各々の誤差を小さく調整したとしても、最終的にはそれらの誤差が積み重なって大きな誤差となって現れることになる。

4. システム導入の効果

〜精度の向上〜

『ボール(基準球)計測マクロ』の導入後、導入前と同じ方法によって計測した加工機の空間位置精度は0.006mmとなり大幅に精度が向上した。加工機の絶対位置精度が向上したため補正量ゼロで加工する初品の寸法精度が向上し、試し加工1個目で良品とすることも可能になった。また1個目の加工で公差を外れても投入する補正量が微小であるため、少ない工数で連続稼働を開始することが可能になった。

〜段取り工数を大幅に削減〜

『ボール(基準球)計測マクロ』を導入した結果、従来では約20時間を必要としていた段取り工数が4時間に短縮された。この工費削減の効果は年間で1,800万円以上になる。

短縮工数 16時間
段取り回数 [年あたり] ×24回/年
工費 [時間あたり] ×6千円/時間
加工機台数 ×8台
工費削減効果 [年あたり] =18.4百万円/年

〜生産計画も簡素に〜

従来では部品の種類毎に加工機を限定し、工具を加工機の工具マガジンに常時入れたままにする生産形態を採用していた。これは工具を入れ換えることによって工具補正の再調整が必要になり、段取り時間が増加することを避けるためであった。また生産量の変化などにより工具マガジン内の工具の入れ換えが必要になったときには、取り外した工具を工具補正データと共に保管し、他の加工機には流用しない運用方法を採用していた。この方法は工具本数を増加させるだけでなく、生産計画の柔軟性をも低下させていた。

『ボール(基準球)計測マクロ』導入後は加工機の絶対位置精度が向上して工具補正量が小さくなったため、工具の入れ換えや共通化が自由に行えるようになり生産計画も簡素になった。

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