導入事例 マシニングセンタのサーボ調整を実施|高速高精度パラメータの調整で加工時間が半減(インドネシア)
試作模型や鋳造木型を加工するS社インドネシア工場で、門型マシニングセンタの高速高精度制御のサーボ調整を行い、加工時間の短縮を試みました。3日間の実機での調整の結果、加工時間を約50%短縮することに成功しました。
■所在地:インドネシア ジャカルタ
■業種:プロトタイプ/モックアップ製品、金型製造
■設備機械:FEELER(台湾)製 門型マシニングセンタ
■制御装置:FANUC 0i MD
■導入時期:2019年8月
高効率生産を追求
インドネシア, ジャカルタ東部にあるこの日系企業は、自動車関連の試作部品や金型等を製造しています。硬質ウレタン、ケミカルウッドからアルミニウムに至るまで幅広い加工材料に対応し、高精度で複雑形状の製品を短納期で製作することを得意としています。近年の受注量の増加と試作期間の短縮要求に対応するため、加工の高効率化が求められてきています。
作業1日目 現状把握に注力
まず現状を把握するために、実際のプログラム運転を確認させて頂きしました。問題を再現すること、そしてそれを自分の目で確認することは、問題解決のための重要な一歩です。プログラム運転中の実速度が指令値に到達していないようです。速度表示を見ると、プログラム指令値はF4500mm/minですが、実速度は約F2800mm/minまでしか到達していないことが分かりました。
<AI輪郭制御の調整が必要と判断>
実際のプログラム運転は時間がかかるため、X, Y, Z軸の各軸を単独で直線往復運動させるプログラムでテストをしました。送り速度指令をF10000mm/minとしても実速度は約F4300mm/minになっており、減速機能が働いています。また試しにAI輪郭制御をOFF(G5.1 Q0指令)して運転をすると、実速度は指令値通りF10000mm/minに到達します。このことからAI輪郭制御の調整が必要であると判断しました。
実速度が指令速度に達しない
2日目 サーボ波形の観測とパラメータ調整
サーボビューアを使い、速度とトルク指令の波形を観測しながらパラメータ調整を行いました。サーボビューアはFANUCのサーボ調整ソフトで、NCとパソコンをLANケーブルで接続してサーボ波形を観測できます。サーボ波形を観測しながら、AI輪郭制御のパラメータを調整して、速度やショックの変化を見ます。
<調整のポイント>
調整時に私が心がけていることがあります。これらはパラメータ調整に限らず、切削条件調整についても共通することです。
- 短時間で調整結果を確認できる方法を考える >調整と確認をなるべく多くくり返すため
- 同時に複数のパラメータを変えない >各パラメータの影響を正しく把握するため
- 調整は最初のうちは大きく増減させ、その効果を確認する。その後細かく増減する。 >効果の無いパラメータを調整したり、設定単位を間違えたりするのを防ぐため
- 振動やショック等が起きる限界に対しては、余裕を持った設定にする >常に安定した状態に調整するため
- あまり細かく調整しようとしない >一つの調整に多くの時間を費やすより、別の要因や方法を探すことも重要
一通り調整を終えたら、再度実際のプログラムを運転してみます。目視でも分かるほど動作が機敏になっています。実速度も指令値F4500mm/minに達しました。
3日目 実加工の確認|加工時間が半減
時間短縮効果を確認するために、実加工テストを行っていただきました。時間短縮はプログラム内容によって変わりますが、平均で約50%の短縮になりました。
速さと精度は一般的に相反する関係にあり、速さを優先すると精度が低下し、精度を優先すると遅くなるのが原則です。従って“最高速かつ最高精度”という正解は存在せず、加工ワークに合った最適解を探すことが目的になります。今回のワークの要求精度に対して、初期設定が精度優先であったため、速度優先の調整を行ったことで、加工時間が大きく短縮しました。
門型マシニングセンタによる3次元加工
作業を終えて
今回の出張は当初、現状の問題を把握する為の下見と打合せが目的でした。しかし、海外出張では現地に行くだけでも時間と費用がかかります。そこで、下見の際に出来ることは実施できる様に、日程に余裕を持たせ、道具や資料も準備して行きました。幸運にも予想以上の効果を出すことができて、1回のみの出張で作業を終えることができました。“海外出張では、予期しない事が起こることがあるので、日程には余裕を持ってください。”と言っていただいた社長様の気遣いが、今回の成功要因のひとつです。“マシニングセンタのスピードアップで加工時間が短縮でき、作業者の負担も減りそうです。”とのメッセージをいただきました。
建設ラッシュのインドネシア
※ここに示す数値は実績値の一例です。全ての条件で同様の効果が得られるとは限りません。
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